飲用乳ってなに?
いつも飲んでいる牛乳が日本で飲まれるようになったのはいつごろからなのでしょうか。
牛乳が日本の文献の中に出てくるのは、9世紀の初めです。飛鳥時代に渡来人の智総の子善那が初めて孝徳天皇(645~654年)に牛乳を献上し、これにより天皇から和薬使主[やまとのくすしのおみ]の姓[かばね]を賜ったとの記録(平安時代の815年「新撰姓氏録[しんせんしょうじろく]」)が残されています。
当時、牛乳は主に貴族社会で利用され、広く普及するには至りませんでした。
江戸時代に入って徳川8代将軍の吉宗が、房州の嶺岡に白牛を放牧、搾乳したのが、酪農の先駆けともいわれています。
時代が進み、1853年に黒船が来航し、西洋文明に触れることにより、新しい生活習慣がもたらされ、牛乳を滋養強壮の糧とする考えが一般庶民の間に芽生え始めました。この頃、日本の飲用牛乳の開祖と称される房州生まれの前田留吉が、幕末の文久3年(1863年)横浜で牛乳販売店を開いて牛乳を販売しました。
以来、牛乳店を開業するものが相次ぎ、牛乳は急速に一般庶民の間で飲用されるようになってきました。
特に、第2次世界大戦後は、学校給食の広がり、洋風の食生活の進展などから消費量はめざましい増加をたどってきました。今日のように牛乳が多くの人々に手軽に飲用されるようになったのは最近のことであり、食品としては伝統と、新しさを備えたものであるといえます。